11月は秋!!!!秋だから冬じゃないからセーフセーフ!!!!
追記から「せんせいとわたし」のセルフ二次創作SS。
「ぼくとあのことせんせい」ってな感じでモブ男子生徒視点の読みにくいお話。
せんせいが完全に空気と化している上にもしかしたら性格がちょっと悪い?かも?しれない??
▼「せんせいとわたし」SS
僕はいじめられている。できれば学校には行きたくないけど、父さんと母さんに叱られるから行くしかない。いじめられていると言ったって、お前が鈍臭いのが悪いと言われるだけだ。
先生に相談した時、先生は僕にどんな風にいじめられているのと聞いた。
僕は正直に話した。まず学校に着いて下駄箱で靴を履き替えているとみんなが僕をクスクス笑うこと、僕が教室に入った途端にみんなが静かになって何か小声で話し出すこと、授業中に近くの席の人に教科書を見せてと言っても無視されること……。
先生は――多分、僕にわからないようにしたつもりで――鼻で笑って、それはもしかしたら被害妄想なんじゃないかしら、と言った。それから、もう少ししたら進級してクラス替えがあるから、ちょっとだけ辛抱しなさい、とも。
冗談じゃないよ。新しいクラスになったって、また別のクラスメートにいじめられるだけだ。先生はわかってない。誰もわかってくれない。
新しいクラスには、前のクラスの人が何人かいた。その何人かは、やっぱり僕を見てヒソヒソ話をしている。
担任の先生は、去年とは違う人だった。男の人だ。
「大川先生ってすごくカッコいい。ねえ、そう思わない?」
隣の席の女の子が言った。女子は若い男の先生が好きだ。それと、ノリの良い若い女の先生も。
「ねえったら、無視しないでよ!」
隣の席の女の子が僕の肩を掴んで強く揺さぶった。僕はびっくりして椅子から転がり落ちそうになってしまった。
「えっ!?」
「あなたに話しかけてるんだけど!」
あなたって、僕のこと? 隣の席の女の子はぽかんと口を開けて僕を見る。クラスメートに話しかけられたのも、まっすぐ目を見られるのも、すごく久しぶりな感じがした。
「ぼっ、ぼくに? なんで?」
「なんでって、だって隣の席だし……。」
隣の席の女の子は、それから、へんなの、とつぶやいて前を向いてしまった。きっとこの子にもいじめられる。ああ、いやだ。学校に来たくない。
国語の授業が始まって、先生が教科書を開いて、と言った時、僕は家に置いたままの国語の教科書を思い出した。昨日の夜、新しい教科書に名前を書かなくちゃと思って、そのまま鞄にしまうのを忘れちゃったんだ。
どうしよう。どうしよう。俯いてもじもじしていると、隣の席の女の子が前屈みになって、下からそうっと手を伸ばして僕の肘をぽんぽん叩いた。
「どうしたの? 教科書忘れちゃった?」
「あっ、ウン。」
「見せてあげる。」
隣の席の女の子が机を引き摺る。ギゴゴー。大きな音に先生が、そこ、何してるんですか、と女の子に言う。「教科書がなくて。」「授業が始まる前に言いなさい。次回は気を付けるように。」「ハアイ。」まるで隣の席の女の子が教科書を忘れたみたい。ごめんね、ごめんなさい、僕のせいで。意気地なしの僕は謝ることもできないで、くっついた机の真ん中に置かれた教科書を背中を丸めてじっと見つめた。一瞬だけ隣の席の女の子を盗み見たけど、怒ってたのかどうだかわからない。
僕は毎日体温計で熱を測る。熱があったら学校を休む口実になるから。
今朝は暖かかったのに背中がゾクゾクするから、もしかしてと思っていたらやっぱり微熱があった。熱があるから休みたいと母さんに言った。
「社会に出たら熱くらいじゃ休ませてもらえないのよ、今からそんなんでどうするの? 母さんを不安にさせないでよ。」
学校に行くしかなかった。
下駄箱で靴を履き替える。クスクス笑われる。教室までの道のりが遠くて、寒い。教室はもっと寒い。
朝のホームルーム中に大きなくしゃみが出た。口に手のひらを当てていたら、鼻水が垂れて手についた。誰かが吹き出す。すごく恥ずかしい。
「あーっ、大変、ティッシュ持ってないの?」
隣の席の女の子が言った。持ってる。持ってるけど、こんなベタベタの手じゃ無理だ、鞄の中のティッシュなんて探せない。もっと笑われる。
隣の席の女の子は自分のポケットティッシュを取り出して、僕に差し出した。
受け取れない。だって鼻水が付いちゃうのに。
僕がまごまごしていると、隣の席の女の子はティッシュを一枚取って僕の顔にあてがった。
「はい、チーンして!」
「えっ、えっ、」
「早くほらぁ、チーンしてよ。」
隣の席の女の子を見る。からかっている顔じゃない。僕はもう頭が真っ白になって、言われるまま女の子の手の中のティッシュで鼻をかんだ。
耳がすごく熱い。恥ずかしい。
隣の席の女の子は最後にティッシュで僕の鼻をぐいぐい拭ってそれをゴミ箱に投げ入れた。
多分、クラスの他の人たちが僕のことを何か言った。赤ちゃんみたい、とか、言っていたかもしれない。でも何も聞こえなかった。
あの子はなんで僕と話したり、触ったりできるんだろう?
お昼休みの後の掃除の時間、僕は階段の踊り場の掃き掃除をした。隣の席の女の子も一緒。
掃除の時間は校内放送で音楽が流れている。隣の席の女の子はその音楽に合わせて鼻歌を歌っていた。
「……あ、の、あの……。」
「なにー?」
隣の席の女の子がホウキの先のゴミを見下ろしたまま返事をした。目が合わない。
「どうして、僕と話したりできるの。」
「えっ、どういう意味?」
「だって、みんな僕のこと嫌ってるのに、誰も僕と話したり、教科書を見せてくれないのに、どうして……。」
隣の席の女の子は顔をあげて僕を見た。今何を考えてるのかな。
「どうしてって……知らないよ。でも嫌いな子と話したいとは思わないよ、わたし。」
「……僕のこと嫌いじゃないの?」
「うん、好きだよ。」
好きだよ。好きだよ? 好きって、なんのこと?
僕が黙ると、隣の席の女の子はまた下を向いて掃き掃除を始めた。
背中がゾクゾクする。なんだろう、なんだろう。何か言わなくちゃ。
「んっ、僕も、僕も好――」
「あっ先生!」
隣の席の女の子が階段の上を見上げて嬉しそうな声を出した。担任の大川先生が上の階から降りてきたみたいだった。
「ずいぶん丁寧に掃除しましたね。もうすぐチャイムが鳴りますから、二人とももう教室に戻っても良いですよ。」
「やったー! じゃあ先生、一緒に教室まで行きましょーよー。」
「はいはい。」
先生が階段を降りていく。隣の席の女の子がその後をついていく。ついて行ってしまう。
先生が僕の前を通り過ぎる。一度も目が合わない。先生は僕を見ない。まるで無視するみたいに、階段を降りていく。これって「被害妄想」なのかな。隣の席の女の子を連れて行ってほしくなかった。