「
ちょこれィと」の二次創作SS書きまみた
地の文ばっかり、ユーザー≠一人称 です
▼「ちょこれィと」二次創作SS
窓の外をいつつかむっつぐらいの年頃の子が走っている。とても気怠かったので目線だけでその子を追って、転んでしまえクソガキと密かに毒づくとわたしの呪いに足を絡みとられたそのクソガキが躓いた。しばらく事態を呑み込めずに呆然としていたくせに母親がやってくると途端に咽び泣くクソガキの耳障りな声を窓を閉めることでシャットアウト。涙なんか出ないのに首から顔から真っ赤にしちゃって猿みたい、ああヤダヤダ。
一枚の硝子の向こうからおっかあおっかあと汚い泣き声が漏れ聞こえてくる。
膝下に視線を落として他人の不幸をしばらく楽しんでから窓から射し込む明かりを辿って部屋のどんどんと薄暗い隅を見た。
見慣れない金魚鉢。縁に金細工がしてあってとても綺麗だけどとても趣味が悪いいかにもお金だけがかかっていますとばかりの硝子の器。お父様がわたしを愛している証。わたしを愛しているということが気持ち良いお父様の独善。
金魚鉢の中で大きな頭が身じろぎすると細かい気泡がぷくぷく散った。もっと大きな水槽でも用意してあげたらいいのに、お父様はこの金細工の硝子鉢をわたしの部屋に置きたがった。いらないって言ったのにお父様はわたしが照れて遠慮してるって。耄碌ジジイ、いつだって余計なことばっかりする。わたしの願いを叶えてくれたことなんて一度もないくせにお父様の好きなことは「愛娘のわがままを叶えてやること」。
「美しい母親の美貌を受け継ぎながらあなたはしかめ面の父親の真似ばかりするんだね。」
金魚鉢の中の水が揺れる。ぴちゃぴちゃ跳ねる。鉢の中の顔は目を閉じて笑っていた。
うるさい、見世物小屋で飼われていたクズのくせに。こんなフリィクを買いあたえられてお父様はわたしが喜ぶと思っている。わたしを出汁に高い買い物をして自尊心をみたしたいだけでしょ。
みすぼらしくて不気味で口やかましいこんなもの、わたしの身体さえ不自由でなければこの窓から放り投げてやるのに。悪趣味な鉢を叩き割って、それでわたしが吃音さえ患っていなければいくらでも言い返してやるのに。大声で、こんなものいらなかったと叫んで脳足りんのお父様に突き返してやるのに。
思い通りにいかない、何もかも。息苦しくて悔しくてとても生き辛くて、これじゃあわたしが金魚鉢で飼われてるみたいじゃないの。
「泣いているのかい。」
泣いてないけどただちょっと、ちょっと溺れて前が見えないだけ。