ネタが降ってきたので「せんせいとわたし」のセルフ二次創作SSを書きました〜!
ゲロっちゃうせんせいが書きたかったんです♡朝っぱらから何やってんだろ♡
「せんせいとわたし」でハッピーエンドを迎えて同棲しているせんせいと大学生ユーザちゃんのお話です。
かなり汚くて色々と病んでるので苦手な方はご注意ください。
追記からどうぞ!
▼「せんせいとわたし」SS
午前で学校が終わりだったので一人暮らしの友人の家へ寄ってレポートを書いた。お昼を振舞ってもらった後すぐそれに取り掛かったはずなのにふと見上げた時計の針はもう十を指している。言わずもがな夜の十時であるが決して作業が捗ったわけではないことの証拠にローテーブルに置いたノートパソコンの画面には未だ未完成のレポートが鎮座ましましていた。
それもそのはずで、この数時間わたしたちが何をしていたかといえばキーも叩かず広げたお菓子をつまんで楽しいおしゃべりに花を咲かせるばかりで少しもレポートが進まないのは当然のことだった。
友人の一人が終電が無くなるからと慌てて帰り支度を始めたのを見て、じゃあそろそろお開きにしようかということでみんなで友人の家を出た。また明日ね、と手を振りながら欠伸を噛み殺すと生理的な涙でじわりと視界が滲んだ。
すっかり乗りなれた電車に揺られて駅からバスターミナルへ向かう。重たいまぶたを必死に持ち上げて時刻表を確認するとつい五分前に深夜の最終バスが出てしまっていた。仕方なくタクシー乗り場へ行き、停まっていたそれの後部座席へ転がるように乗り込んだ。
自宅近くで料金を払い車を降りる。街灯の下を通る時に腕時計を見るともう日付けを跨いでしまっていた。
とてつもなく眠い。さっさと化粧を落としてシャワーを浴びて寝てしまおう。
玄関についてドアが閉まると家中が奇妙な静けさに包まれて甲高い耳鳴りがした。
同居人はもう寝ているのだろうか。いつもはどんなにわたしの帰りが遅くても、自身が疲れていても起きて帰宅を待っていてくれるのに。そういえば今日は遅くなることをメールで伝えなかったから、すっかり待ちくたびれてしまったのかもしれない。もとはこんなに遅くなる予定ではなかったから、連絡をしようなんてそもそも考えも及ばなかったけれど。
廊下を進んでこっそり寝室を覗く。
結論から言うと同居人は寝ていなかった。暗い寝室の中で彼はベッドの上にはいるけれどこちらに背を向けるように小さく蹲って座り込んでおりとても寝ている風には見えない。
何をしているのか気になって見つめていると彼が時折苦しげに呻き声をあげていることに気付いた。そして寝室中に妙な臭気がたちこめていることにも。
「……先生?」
思わず懐かしい呼称で呼びかけるとその人の肩がブルリと大きく震えたのがわかった。
彼はある時よりわたしがこう呼ぶと困ったように眉尻を下げて苦く笑う。そしていつも名前で呼ばれたがった。「もう先生ではないのですから」と。
徐にベッドへ近付くにつれ暗闇に慣れ始めた視界にその異様な光景は飛び込んできた。
先生はシーツの上に広がる恐らく彼自身のものと思われる嘔吐物にまみれてひどく震えていた。そして時々重々しくえずいてまたビチャビチャと水のような嘔吐物を吐き出した。
一体何が起っているのかわからない。しばらく呆然と先生を見下ろして、それからハッとして床に膝をついて彼の顔を覗き込む。
「先生どうしたの、風邪ひいた? お腹痛い?」
なるたけ優しい声が出るよう努めたが先生は怯えたようにゆっくりとした動作でわたしを振り返った。
先生は泣いていた。苦しそうに嗚咽をもらしながらボロボロ涙を流してその目でわたしをじっと見ている。それから紫色した唇をぎゅっと噛み締めてしぼりだすように言葉を発した。
「どこに、いたんですか。」
多分そう言ったのだと思う。聞いたことのないような声だった。
いままでどこに、先生は繰り返した。
「友達の家。レポートやってたら連絡するの忘れちゃって、ごめんね先生、ゆるしてね。」
「うそだ。」
今度はいやにはっきりとした口調で言った。うそ、とは何に対してのことなのかわからなくて少し戸惑う。言い淀んでいると、先生の瞳がやはりと言いたげに見開いた。
「もう、嫌になったのでしょ、私を、好きでなくなってしまったんでしょう。」
先生は自分で言ったその言葉にひどく傷ついたようにギュッと眉を顰めてしゃくりあげた。その様子がなんだか小さい子供のようで少し笑ってしまう。
「そんなわけないでしょ、わかってるでしょ先生。」
「いやだ、ああ、ああ……。」
先生はわたしをじっと見据えたまま両手で頭を抱えて色素の薄い髪をぐしゃぐしゃと掻き回す。いつもきちっと整えられているそれが今はすっかり乱れていて少しだけ彼を幼く見せた。
肩にかけたままだった荷物をすべて床へ放ってベッドへ乗り上げるとお尻の下で先生の吐いたものがぐちゅっと音をたてた。服もシーツも汚れたらクリーニングに出せば綺麗になる。それに先生の口から出たものだから、肌に付いたって全然不快じゃない。
「あなたがいないと僕は、駄目です、あなたが、あなたがずっと、いてくれないと……。」
「うん、ずっといてあげる。」
「僕を置いて、どこかへ行かないで。」
「どこにも行かない。先生のそばにずっといるよ。」
「あなたが好きです、どうしてもあなたが好きです、好きで、好きで、とても苦しい、あなたがいてくれないと、もう生きていられない。」
「嬉しい、わたしも先生が大好き。」
腰に腕を回して先生の胸に頬を寄せてみる。ギュッと抱きつくと柔軟剤とか先生の汗とか嘔吐物とか色んな匂いがして、耳元ではどくどくと心臓の音がして、泣いているせいか体温がとても高くて、すごくドキドキした。
「もう大学は辞めてくれますか?」
不安を滲ませたような小さな声で先生が言った。それにちょっと悩んで、だけど、考える必要なんてない。抱きついたまま一度だけ頷く。
「……うん、やめる。」
わたしがこたえると、先生は頭へやっていた両手をそろりとわたしの背中に回した。首筋にやわらかく唇を押し当て肩口に顔を埋めた先生はどんな顔をしていたのだろう。喜んでくれたらいい。せんせいが笑っていてくれたらわたしはとても幸せだから。